遷径計画

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色々な自転車の様々な軌跡に対する迷走の備忘録です.

【CARRYME】92Tの装着,クランク・BBの交換

2020年の6月にキャリーミーを購入.その後1年間で多数のパーツ交換を施しました.

購入1年後の様子
本記事ではそのうち,以下の箇所の交換例をまとめて紹介します.

  • チェーンリング
  • クランク・BB

項目や写真ごとに多少時系列が前後しますが,ご了承ください.

チェーンリング

日時

2020年10月

交換内容

Multi-S 92Tチェーンリングセット

loroshop.stores.jp

動機・背景

元々はちょっとした距離の補完などを主目的として購入したキャリーミーですが,走っているうちに欲も出てきます.ギア比もその一つ.

極小径車に速度を求めるのは筋違いではありますが,通常のギア比は個人的に物足りませんでした.
速く走ることは求めずとも,遅すぎるのも避けたい.

キャリーミーは呼び番号25の伝動用チェーンを採用しており,一般的な自転車のチェーンとはJISの規格番号からして別物です.
そのためギア比の変更方法は限られており,現状取れる選択肢は大きく分けて2つです.

  • スピードドライブ(以下SD) SDとは内装2段変速が可能なBB一体型クランクの事で,元々のギア比に対して1倍:1.65倍の切り替えが可能となるようです.
    本家ドイツ製(スイス製)と台湾製の2種類があるようですが,機能は同じとの事なのでここでは分けません.

cycleshibuya-staff.seesaa.net

  • チェーンリングの交換
    標準のチェーンリングがフロント84Tですが,この歯数を変更する方式.
    現在入手可能なものは,92T64T(CarryAll用).キャリーミー最初期の「OX Pocket」などは100Tを使っていたようですが,今現在の新規入手方法は不明.
    今回はギア比を大きくしたいので,92Tが候補となります.

なお過去にはスプロケットを自作して自転車用チェーンを使えるようにしたり,多段スプロケット及び変速機を増設してホイールのスプロケットと連動させたりしたケースもあるそうですが,それらは特殊に過ぎるので考慮しません.

選択

交換内容の通り,92Tを選択しました.
理由は以下です.

  • 価格面
    SDは高機能な分価格も高く,具体的な金額は不明ですが本家のものだと10万越え.台湾製だと4万程度で手に入るようですが,いずれにしろ高価
    92Tも当時価格で2万強はしたので正直高いのですが,SDに比べれば手頃に見えます.


    という内容を書くにあたり販売元を確認したら,2022年10月現在で3万超えていました.SDとあまり価格差なくなってきましたね….

正直この理由が圧倒的でしたが,自分を説得するための他の理由も追加します.

  • 整備面
    SDはハブ用内装変速機等と同様に,遊星歯車装置を使った変速機構.
    そのため複雑な構造を有しており,着脱にも高価な専用工具が必要で癖が強そう1

    基本的にパーツ交換含む整備は自分でも行えるようにしたいので,整備性は落としたくないのが正直なところ.
    その点92Tはチェーンリング周りを交換するだけで他に影響はないため,作業が楽です.

  • 入手性
    車体の購入店であるLOROさんでは92Tの取扱があり,店頭在庫もあったためその場での購入が可能でした.

  • クランク・BB
    SDはBB一体型のクランクのため,当然ながらBBは選択不可.
    クランクも一見スクエアテーパーならば対応しそうですが,正式な互換性は不明

    逆に92Tはチェーンリング交換のためクランク・BBは自由
    個人的にはスクエアテーパーよりホローテックⅡのような中空クランク・BBの方が好きなので,その点で優位です.
    本記事の後半ではそれらの交換を取り上げています.

導入

(例によって作業風景など撮れていませんがご了承ください.)

92Tチェーンリングセットの付属品は以下です.

  • チェーンリング
  • チェーンリングカバー
  • チェーン

また任意ですが,フレームへのチェーンの接触が気になるならばプロテクターの装着もしておけば安心です. loroshop.stores.jp

作業内容を大雑把に挙げると,

  1. 後輪外す
  2. チェーン外す
  3. チェーンリング取り替える
  4. 新しいチェーン付ける
  5. 後輪付ける

となりますが,例えばチェーンを切断・または自前で用意してジョイントリンク等で繋げる場合後輪の下りは簡単化が可能.
チェーンテンション調整は必要ですが,ホイール外すための諸々の作業が省略できます.

結果

当然ですがギア比が上がったので,僅かですが速度帯も上がりました.
参考までに,当時計算したケイデンスと速度の対応表を載せておきます.

実測とは誤差があるので,参考までに.

ケイデンスでの巡航速度が上がるのもそうですが,要求ケイデンスが高いため同速度(同パワー)に対するケイデンスが下がるという観点でも個人的には結構ありがたい.
普段慣れている範囲のケイデンスなら問題ないですが,それより高くなってくるとパワーの維持より先に回転の維持の限界が見えてきてしまうので,距離を重ねるほど恩恵が出てきます.

劇的にギア比が変わるわけでもないので,登坂も割と対処可能.
地味に嬉しいのが,下りで足を回して対処できる範囲が広がるところ.速度の出る下りにて路面にハンドルが取られそうで冷や冷やすることもあるので,ペダリングで荷重する選択肢が増やせると安心できます.

とはいえここまで書いてきて根も葉もないですが,まだ物足りなさはあるのでSDにも機会があれば交換してみたいですね.

クランク・BB

日時

2020年12月

交換内容

クランク

FC-5650 クランクアーム 165mm

BB

SM-BBR60 BSA

動機・背景

チェーンリングを交換したことでギア比は多少改善しましたが,もう一つの課題がクランク長
純正のクランクは160mmなのですが,普段170mmを使っているため,大分短い.
また当時ポジション調整でロードのクランク長を165mmにしてみようか迷っていたこともあり,試験も兼ねて165mmのクランクを導入しようと考えていました.

その場合,取れる手段は基本二つ.

  • スクエアテーパーのクランクを装着.BBはそのまま OR 同規格のものに交換
  • 中空軸のクランクを装着.BBはそれに合うものに交換

後述しますが私は中空軸のクランクの方が好みなため,後者の選択肢一択でした.

必要なアームの規格はPCD(BCD)110mm,5アーム」.これに合うものを探します. 選択肢をあげるとキリがありませんが,中空軸の一例は以下.

  • 通常式(非ダイレクトマウント)
    シマノ,DIXNA(ラ・クランク),SRAM,ROTOR, ...
    • 右クランクアーム(スパイダー・スピンドル一体式)と左クランクアームのセットで構成される,いわゆる一般的な形式
    • 無難で選びやすいが,大手コンポメーカーの近年のクランクは規格が異なるものが主流のため,旧式のものを中古で探すケースが多い
    • 今回不要であるチェーンリングもセットなことが多い
  • ダイレクトマウント式
    ROTOR,OnebyESU(ジェイ・クランク),SRAM, ...
    • 左右クランクアーム,スパイダー,スピンドルといった単位で独立している形式
    • 規格さえ合っていれば組み合わせは自由なため,カスタムの幅が広い
    • 対応可能なパーツは近年も増加傾向?
    • 部品点数が多く高価なものが多い(中古市場も通常式の方が優勢?)
    • シマノのロード用コンポは現状非対応

選択

結論として,クランクはシマノの105,BBもシマノの105/ULTEGRA相当のものを選択しました.

クランク

シマノ105にした理由は以下.

  • シャフト径
    キャリーミーのBB規格はねじ切り(BSA)式.BSAで30mmシャフト対応のBBもなくはないですが,入手範囲が広いのは24mm.
    特に今回はシマノのBBを使いたかったため,24mmシャフトのものを前提としました.

  • 価格面・信頼性・色
    出費を程々に抑え,かつ信頼性が担保できる選択肢としてシマノは非常に有力.流通量も多く中古市場が大きいため,アーム単体を安価かつ容易に中古で入手可能でした.
    また他社のクランクは黒基調のものが多く,シルバーのクランクの選択肢が少なかったのも一因です.

    同様の24mmシャフト・シルバーのクランクではDIXNAのラ・クランクも有力ですが,やはり先述の価格面や入手性で一歩劣ります.
    この製品は130mm~の短いクランク長 & 167.5など入手性の低いクランク長への対応狭いQファクターなどが特徴ですが,今回それらは不要なため評価は変わらず.
    同様の理由でOnebyESUのジェイ・クランクも見送り.

  • グレード
    当然ながらグレードによって価格や性能はまちまちですが,Tiagra以下と105以上には「アームの中空化」という明確な差異があります.
    スペック上は「中空アーム化により軽量性と剛性を両立…」などの言葉が並びますが,個人的なポイントはアーム裏側の肉抜きの有無
    裏側が平滑な中空アームでは,肉抜き部分の汚れや掃除のしづらさといった不満から解消されます.

    ULTEGRA以上だとチェーンリングにも肉抜きは入りますが,今回は無関係.当然細々とした軽量化や剛性アップなどはありますが,今回の導入にあたっては105が価格と性能のバランスが丁度いいと判断しました.

    上がFC-5650 (105),下が純正

あとは世代ですが,105でいえば5800世代から4アームに移行したため,5700世代以前のコンパクトクランク(FC-XX50)が対象.
欲を言えば5750が理想でしたが,ヤフオクに5650が落ちていたためそちらで妥協.

当時5600系と5700系で大きな差はないと判断していたのですが,本記事執筆にあたり調べたところ以下の仕様変更があったとの噂.

  • クランクシャフト
    クランクシャフトの材質が5600系列ではアルミ,5700系列でクロモリ.
    正確には6600系列と6700系列での比較記事2ですが,対応するクランクフィキシングボルトの品番がそれぞれ同じなので5600,5700でも同様と思われます.外すの面倒なので現物の確認はしていません.
    公式ソースが確認できなかったため真偽不明ではありますが,真の場合は耐久面など考えると5700系列のが良かったかもしれません.

  • 歯先間距離
    5700系列登場時のプレス3では,以下が記述されています.

    アウターギアとインナーギアの歯先間距離を広げ、前後が小ギアの組み合わせ時、チェーンとの接触を低減

    文字通りインナー/アウター間の距離が広がり,FDやSTI後方互換性はないとのこと.

    引用元:メーカーHP_2011年
    この設計の修正が①チェーンリング側,②クランクアーム側,のどちら主体で行われたかは不明ですが,後者の場合ならば後述するキャリーミー取付時のチェーンラインやクリアランスに影響あるのかなと少し思いました.

BB

BBはセラミックBBに代表される「(空転時に)よく回る!」というハイグレードなものも出回っています.こちらはロードで試しに導入してみましたが,私には正直耐久性を犠牲にするほどのメリットは感じられませんでした.
92Tのキャリーミーでは猶更な話なので,耐久性を重視したBBが今回の命題です.

やはり耐久性・入手性・価格の三拍子がそろっていると言えばシマノ.必要なのがねじ切りBBということもあり,迷う余地はありませんでした.

グレードは105/ULTEGRA相当のSM-BBR60を選択.
デュラエース相当のSM-BB9000(原稿はSM-BB9100)も十分安価なため選択肢には入りますが,あえて選択から外しています.

BB9000はBBR60と比べ回転が軽いと言われますが,その理由はシール構造とベアリング径が主です.
それらにより耐久性を犠牲にして回転を得ている,極論で言えばセラミックBBと似たような立場でしょうか.
これは明確に今回の命題と反しますので,除外となりました.

長くなりましたが,以上が導入となります.

導入

まずは記事前半と同様にチェーンリングを外したあと,コッタレス抜き・BBリムーバーなどの工具を使ってクランク・BBを順に取り外します.(例によって作業風景が以下略)
外した様子がこちら.

こちらに新しいBB・クランクを装着していきます.(例によって作)

SD仕様車体などで「BBにねじ切りがない!」という事例を時々耳にしますが,通常使用なのでその点は大丈夫でした.
心配なのは精度面で,ねじ山の精度が悪かったりBB接触面の面取りが不十分だったりするとタッピング・フェーシングなどが必要となることもありますが,こちらもクリア.

このまま問題なく終わるかと思いましたが,別の問題が発生しました.

リアランス問題

キャリーミーのクランク交換の際にしばし目にするのが,「チェーンリングをインナー/アウターどちら側に付けるか問題」.
インナー側に付けるとチェーンリングカバーとの両立が可能ですが,チェーンラインやクリアランスの都合で断念するケースもあるとか.
私は街乗りメインで使いたかったため,インナーに付けてカバーと併用できるのが理想.

というわけで,試しに装着.

チェーン汚いのは許してください..

ステー部分はクランク付近で少し凹んでいるため写真の見た目よりは若干の余裕があり,装着自体は可能でした.
ただ少しだけクリアランスが足りず,クランクを回転させるとチェーンピンがステーに接触し,ガリガリ削ってしまう結果に.

ただその程度で済むということはクランクを1,2mm程度ずらすだけで対処可能なため,手頃なスペーサーをシャフトに挿入することで解決できました.
私は適当に持っていたものを使いましたが,∅24mmであれば11sフリーの10s用スペーサーも使えるとの噂です.
ギリギリの位置なのでチェーンラインは微妙かもしれませんが,致し方ありません.

「スペーサー挿入で左クランク側のフィキシングボルトのかかりが悪くなるのでは?」という意見も目にしましたが,今回のように僅かな範囲であれば自己責任の範疇かと思います(推奨するわけではありません).
類似例としては,左クランクパワーメーターの装着でフレームとの接触回避のための挿入などが一例でしょうか.
大手でいえばスギノがスペーサーをやたら高いですが販売していますし,自転車専門店のECサイトでも何種類か取り扱いを確認しています.

もちろんメーカー推奨の形とは限らないため,繰り返しますが自己責任の範疇で各自の判断が必要という点は要注意です.

先述の歯先間距離にてインナー/アウター間の距離の変更について触れましたが,仮にこの変更がクランクアーム部のインナー受け/アウター受け間の距離の変更に起因する場合,5700/6700系を使う時にインナーチェーンリングがより内側に位置して装着できない,という事態は考えられます.
ただチェーンリングのフィキシングボルトは両モデルとも同一(M8 x 8.5)のため,正直その線は薄い気がしますが.

装着後の様子

結果

総合面

折角なので重量ですが,実測100gほど軽くなりました.
(交換前)160mmクランク 452g + BB 330g
(交換後)165mmクランク 600g + BB 76g
まだまだ軽くはありませんが,重量は元々重視していなかったため少し軽くなってラッキーくらいな気持ち.

走行面ですが,剛性の向上及び回しやすさを明確に感じました.
単純にパーツのグレードが上がっているのも一因ですが,やはり「四角軸→中空軸」になってベアリング内径が大きくなったのは大きいと思います.
個人的な感覚としては,四角軸は「中心の点」に力を加えているのに対し,中空軸は「円(シャフト)の接線方向」に力を加えているような差異を感じます.

四角軸は低グレードのものしか使っていないため今後評価が変わる可能性もありますが,これが中空軸を選んだ最大の理由です.

クランク長

ペダリングへの影響については「5mm長くなったことで力を入れやすく~」など言う事も出来ますが,その他の変更が大きくて正直そこまで気づけていないと思います.

一方,副次的な変化としてサドル高への影響があります.
クランク長が伸びると当然ながら下死点もその分遠くへ移動するので,サドル面~下死点間の距離もその分伸びます.
実はこれが今回の交換の裏の目的で,以前シートポストを交換した際に僅かに物足りなかったサドル高の改善に貢献出来ました.

クランク長長くなって地面に当たらないの?」という点については,問題なしです. コーナーで倒しこみつつ回す~などすれば当然当たることもありますが,通常の仕様の範囲で気になったことはありません.
強いて言えば「道路脇の段差近くまで寄った際にペダルがヒットしてヒヤッとする」というのはありますが,これは多分5mmや10mmの問題ではないので議論しません.
175mmくらいまで伸ばすと大変かもという噂は聞きましたが,こちらの真偽は不明です.

おわりに

本記事では92Tの導入,及びクランク・BBの交換を行いました.
途中憶測を含む箇所が多くなりましたが,ご容赦ください.

以下含む4回のページで頭1年間での純正からのパーツ交換を伴う改修はあらかた紹介できた(はずの)ため,次回以降は追加パーツなどを紹介していけたらと思います.

knog.hatenablog.com

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